
- 食の安全への取組み~食品衛生規制の見直しについて~
大阪市中央卸売市場食品衛生検査所
今年、食品衛生法の15年ぶりとなる大幅な改正が予定されています。食品衛生法は、平成15年に大改正されて以降、15年間見直しが行われておらず、国際的に見ても遅れている部分や少し時代に合わなくなってきた部分があり、厚生労働省が見直しを検討しています。
この1月には食品衛生規制の見直しに関する骨子案が示されました。その主な改正内容と基本的な方向性についてご紹介します。
(改正の背景)
○平成15年の食品衛生法改正から約15年が経過し、食品の安全を取りまく環境が変化。調理食品や外食・中食への需要の増加等の食へのニーズの多様化や、輸入食品の増大など食のグローバル化が進展。
○ノロウイルス等による食中毒は依然として数多く、広域的な食中毒事案やいわゆる「健康食品」に起因する健康被害なども発生。
○2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、国際基準と整合的な食品衛生管理が求められる。
○これらの食品衛生をめぐる現状と課題を踏まえ、食品衛生法改正等に直ちに取り組むことが必要。
(骨子案における主な改正内容)
1 食中毒の広域化への対応の強化
高齢化に伴って食中毒の件数が増加するのではないかと危惧されています。食中毒対策をしっかり行うことが求められますが、昨年8月に関東を中心に発生した腸管出血性大腸菌O157による食中毒のように、都道府県を越えた広域食中毒も毎年発生しています。
このような広域的な食中毒に対応するため、厚生労働省、都道府県等の関係者間での連携や食中毒発生状況の情報共有等の体制を整備します。
(広域散発食中毒事案)
発生時期 品目 病因物質 患者数 患者発生自治体 平成28年 10~11月
冷凍メンチカツ (そうざい半製品)
腸管出血性 大腸菌O157
67名 12自治体(1都1府4県) 秋田県、千葉県、町田市、江戸川区、神奈川県、横浜市、川崎市、藤沢市、相模原市、横須賀市、尼崎市、広島市
平成29年 1~2月
キザミのりを使用した食品 ノロウイルス 約2,000名 4自治体(1都1府3県) 東京都、和歌山県、大阪府、久留米市
平成29年 8~9月
不明 ※調査中
腸管出血性 大腸菌O157
34名 (うち3歳児1名が死亡)
4自治体(3県) 埼玉県、川越市、前橋市、滋賀県
(厚生労働省 食品衛生法改正懇談会取りまとめ(概要)より)
2 HACCP(ハサップ)による衛生管理の制度化
「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」の最終とりまとめでは、すべての食品等事業者(食品の製造・加工、調理、販売等)を対象に手洗い励行等の一般的な衛生管理に加え、事業者の規模等に応じたHACCPによる衛生管理が求められています。
このとりまとめに沿って、今後、HACCPが制度化され、それぞれの施設において使用する原材料や製造方法等に応じた衛生管理計画を作成し、HACCPによる衛生管理を行うこととなります。
HACCPによる衛生管理
※HACCPとは、HACCP とは、Hazard、Analysis、Critical、Control、Pointの頭文字をとったもので、詳しくは「かれんとオーシー84号」をご参照下さい。
・かれんとOC vol.84「事業者に求められる食の安全 -HACCP(ハサップ)の制度化にむけて-」
【基準A】
コーデックスのHACCP7原則に基づき、食品等事業者自らが使用する原材料や製造方法等に応じ、以下の内容を含む計画を作成し、管理を行う。
①製品説明、 ②製造又は加工の工程、 ③危害の原因となる物質の特定等、
④危害の発生を防止するための措置、 ⑤改善措置の方法、
⑥検証の方法、 ⑦記録の内容
【対象事業者】
◆事業者の規模等を考慮
◆と畜場[と畜場設置者、と畜場管理者、と畜業者]、
食鳥処理場[食鳥処理業者(認定小規模食鳥処理業者を除く。)]
【基準B】
食品等事業者は取り扱う食品の特性等に応じた計画を作成し、管理を行う。
(食品等事業者団体がHACCPの考え方に基づいて作成した、業種や業態に応じた
衛生管理計画策定のための手引書を参考に、計画を作成する。)
【対象事業者】 → 基準A以外の事業者
◆小規模事業者
◆当該店舗での小売販売のみを目的とした製造・加工・調理事業者
◆提供する食品の種類が多く、変更頻度が頻繁な業種
◆一般衛生管理の対応で管理が可能な業種 等 (例 飲食業、販売業等)
3 リスクの高い成分を含むいわゆる「健康食品」等による健康被害防止対策
現在、消費者の約6割が健康食品を利用していると言われています。このような中、昨年、ホルモン作用を持つ成分が使用された健康食品による健康被害が報告されました。
健康被害防止の観点からリスクの高い、特別の注意を必要とする成分等を含む健康食品については、適正な製造・品質管理の確認とともに健康被害の情報を得た場合には、厚生労働省へ報告するよう制度化することが検討されています。
4 食品用器具及び容器包装の衛生規制の整備
食品に用いられる器具、容器包装に対する現在の規制は、基準を定めた物質についてのみ使用制限を行うという制度(ネガティブリスト制度)です。この制度では、欧米等で使用が禁止されている物質であっても、個別の基準を定めない限り、直ちに規制することができません。
一方、欧米等では、安全性を評価し、使用を認められた物質以外は使用を原則禁止するという仕組み(ポジティブリスト制度)による管理が導入されています。我が国でもこうしたポジティブリスト制度の導入に向けて検討が行われています。
5 営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設
現在、食品衛生法に基づく営業許可が必要と定められている業種は、飲食店営業など34業種あります。営業許可は、食品の種類ごとに細分化されており、1つの施設で複数の許可を取得することが求められることが多いほか、許可の基準が都道府県で異なる場合があり、事業者の負担になっていると指摘されています。
こうしたことから許可対象業種について、食中毒リスクや営業の実態に応じて見直すとともに、営業許可対象業種以外の事業者についても把握することができるよう、営業届出制度の創設が検討されています。
6 食品のリコール情報の報告制度
現在、食品等に問題があり、事業者が自主的に回収を行う場合、食品衛生法ではその報告を求めていませんが、多くの都道府県では条例に基づき報告を義務付けています。
こうした自主回収に関する情報を一部の地域だけでなく全国的に把握するため、全国共通の報告制度が検討されています。なお、欧米ではすでに同様の制度が導入されています。
7 輸入食品の安全性確保・食品輸出関係事務の法定化
輸入食品の安全性を確保するため、輸出国段階の対策強化として、HACCPによる衛生管理や乳製品・水産食品等の衛生証明書の添付を輸入の要件とすることが検討されています。また、食品の輸出が増加している中で食品衛生法には輸出に関する規定がないことから、規定を設けることも検討されています。
(おわりに)
食品衛生規制の見直しに関する骨子案ではその他、行政処分や罰則に関する規定、経過措置などの規定についても整備を行うとされています。
厚生労働省では、食品衛生法の平成30年の改正を目指して進めており、その進捗状況についてはホームページなどを通じて情報提供することとしています。
【参考】
・厚生労働省「食品衛生規制の見直しに関する骨子案」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000191660.html
・厚生労働省「食品衛生法改正懇談会取りまとめ」
- 総合防災訓練を実施しました
大阪市中央卸売市場本場
平成30年2月23日(金)に本場業務管理棟内及びその周辺で本場自衛消防組織総合防災訓練を実施しました。
震度6弱の地震により火災が発生、併せて大津波警報が発令されたとの想定です。
まず、本場自衛消防隊員による初期消火訓練に始まり、防災センター職員による消防署への通報訓練を行ったのち、本場全館に非常放送による避難指示で、業務管理棟などで働く約60名の方が混乱もなく整然と階段を下り避難訓練を実施しました。
また、今回は大阪市消防局所有の消火体験装置を使い、実際の炎を使用した消火訓練を福島消防署の署員の指導を受けながら行いました。
この訓練を機会に、さらに日常での防災意識の向上が図られました。
問い合わせ先 市役所本場(業務管理担当) 電話6469-7955
- 行事予定のお知らせ
第70回 場内野球大会
応援おねがいします!!
日 時 4月6日(金)~4月27日(金) 試合開始 午後3時 ~(1日1試合) (予定日 4月6、10、17、20、24、27日)
場 所 松島球場(西区千代崎1丁目) 試 合 トーナメント方式 申込締切 平成30年3月12日(月)申し込み締め切りました。 その他 優勝・準優勝チームは、30年度の京阪神三都市市場大会(10月 京都大会)の代表になります。 《詳細は、市場協会(内線7850) 飯田までお問い合わせください》
- 資料室からのご案内
新刊案内
『FRA NEWS ノリの研究』(水産研究・教育機構)
海苔は、たんぱく質、カルシウム、食物繊維やビタミン類などを含み、栄養学的にも優れた食品です。おにぎりやすしなどの日本料理にも欠くことができません。海苔の原料はノリ(アマノリ類)で、ほとんどが養殖で生産され、収穫量は、海面養殖の中で第1位です。ノリ養殖は、カキ殻の糸状体から出る殻胞子をつけたノリ網を海面に張って行います。このとき、ノリ網を海面から出して乾燥させる「干出(かんしゅつ)」を一定時間行います。干出には、ノリ以外の藻を枯らす、幼い葉状体を強くする、単胞子を多く出させるなどの効果があります。秋から冬にかけて育ったノリを摘み取り、洗う、ゴミを取り除く、刻む、乾燥するなどの工程をへて海苔が出来上がります。ノリ収穫量が多い都道府県は、佐賀県、兵庫県、福岡県、熊本県、宮城県などです。いずれも、河川の水と海の水が混じる窒素やリンなどの栄養塩が豊かな海域で養殖が行われています。ここでは、重要な水産物であるノリについて、ノリ養殖を取りまく問題や、それを解決するために水産研究・教育機構が行っている研究開発の成果などを紹介します。
【新着の図書・資料の紹介】
『[臨時増刊]日本食糧新聞 総合流通ダイジェスト-食品流通の2017年回顧と2018年展望-』(日本食糧新聞社)
『熊本の果樹 フルーツ&フルーツ』(JA熊本果実連)
『キューピーニュース 人体にすみつく細菌たち』(キューピー㈱)
『水産振興 将来推計を利用した日本漁業の現状把握の試み』(東京水産振興会)
『[臨時増刊]日本食糧新聞 平成29年度 第36回食品ヒット大賞 第31回 新技術・食品開発賞』(日本食糧新聞社)
『アクアネット 特集:水産エコラベルを考える』(湊文社)
『aff 特集1:蚕業革命~歩み出した絹復活への道~ 特集2:和紙』(農林水産省 広報室)
『平成28年度 水産研究・教育機構 年報』(水産研究・教育機構)
『果実日本 特集:Ⅰスモモ産業を展望する Ⅱビワ産業を展望する』(日本園芸農業協同組合連合会)
『野菜情報 野菜の機能性研究 ~たまねぎのケルセチンによる認知機能改善の可能性~』(農畜産業振興機構)

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- 号外 2010年08月05日